フィルムストーリー | 秘密の生まれるところ Skip to content

フィルム

「Cashmere – The Origin of a Secret」はモンゴルと内モンゴルの伝統的な山羊飼いたちの忍耐に対する称賛です。彼らは何世代にもわたり、地球の最も過酷とされるこの地で暮らしています。その生活がいま見えない力によって脅かされています。

リュック・ジャケ監督はこの厳しい自然環境を直接経験したうえで本作を撮影。現地の人たちや家畜と生活を共にしながら制作を行うことで、進化や命そのものに対する理解が深まったと言います。「意志などありません。それは時間と進化の問題に過ぎないのです。人間は動物とともに進化しており、動物抜きでの進化はありえず、最終的には進化によってこそこの驚くべきファイバーが生み出されるのです」(リュック・ジャケ監督)

山羊飼いは先祖代々受け継いできた知識を生かし、持続可能な方法でヒルカス山羊を飼育し、四季の移り変わりと調和しながら原毛を採取してきました。ところが最近、より生産的な反面、持続可能性にかけては劣る品種が導入されたことで、昔ながらの生態系のバランスが崩れ始めています。ロロ・ピアーナは現地のコミュニティや生産者との密接な協力関係のもと、内モンゴルの繊細な生態系との原産種を保護するための活動を行っています。

環境

ゴビ砂漠とアラシャン地区の砂丘の近く、アルタイとヘラン山脈では、昼夜の温度差、さらには季節ごとの寒暖差が、世界で最も激しい地域として知られています。

長く乾燥した冬は数ヵ月に及びます。極寒の寒さの中、猛吹雪が頻繁に襲います。春は穏やかながら大規模な砂嵐が発生。夏は灼熱の太陽が照り付け、雨はほとんど降らず、水と食料が不足します。

ヒルカス山羊

厳しい環境で生き抜くためのあらゆる術を身に付けています。小さい体に強靭な生命力。地球上で最も過酷な条件に耐え得るように進化しています。

激しい季節の変化に順応し、山羊の外側の毛は雨、太陽の日差し、砂埃から身を守ります。柔らかい下毛が体温を維持。この毛が貴重な宝物、カシミヤの繊維です。

モンゴルと中国の山羊飼い

放牧民の山羊飼いのコミュニティは、モンゴルと内モンゴルの限られた住居に暮らしています。 遊牧民はその土地と、その地で生きる動物のことを熟知しています。

何世代も受け継がれてきたノウハウで、カシミヤ繊維を採取する適切な時期を見極め、自然のライフサイクルに従って毛を採取しています。

プロジェクト:ドキュメンタリーフィルム 三部作

「Cashmere – The Origin of a Secret」は生物学者であり『皇帝ペンギン』でアカデミー賞を受賞したリュック・ジャケ氏が監督を務めるドキュメンタリー三部作の第一部です。同三部作はジャケ監督のもと、ロロ・ピアーナのアイコン的な素材であるカシミヤ、ビキューナ、ザ・ギフト・オブ・キングス®という三つの繊維の起源に迫るもので、ロロ・ピアーナが誇る代表的繊維へのオマージュとなっています。

ロロ・ピアーナは6世代以上にわたり、地球の最果ての地から最も稀少な品質の繊維を調達し、それらを極上のファブリックやウェアへと仕立てるために、あくなき追求を続けてきました。

「Cashmere – The Origin of a Secret」は、長年の調和、厳しい自然、そして極上の柔らかさにスポットライトを当てることで、過酷な環境だけが生み出せる最高品質を表現します。ベースとなるのは人間、動物、自然環境の三者の繊細なバランスの上に成り立つ共生。 リュック・ジャケ監督は自身として初めて、人間の営みにカメラを向けます。そうして、大自然が常に猛威をふるう土地で生きるとはどういうことか、その経験を描き出します。

類稀な最高級テキスタイルは、産地固有の特殊な条件の下で育まれた繊維から生まれます。その繊維を安定的に確保するには、長年の研究、素材の深い知識、地元の生産者との信頼と尊敬に基づく永続的なパートナーシップが欠かせません。過酷な環境の険しい地で、ロロ・ピアーナは地域の人々と新しい協力関係を築いてきました。こうして自然に配慮しながら世界最高のファブリックを生産しています。自然環境の保全と伝統文化の維持にも積極的に取り組んでいます。こうした活動はすべて、持続可能な製造に向けた独自の先駆的な取り組みによるものです。

ロロ・ピアーナ・メソッド

ロロ・ピアーナは2009年に、中国のカシミヤ生産を促進する取り組みを開始しました。牧場を支援し、カシミヤの生産プロセスと生産能力の向上を図るプロジェクトです。企業倫理の取り組みの一環でもありました。同年、「ロロ・ピアーナ・メソッド」を導入しました。内モンゴル自治区アラシャン産のカシミヤの品質向上を目的とした山羊の品種改良の近代的システムです。後に、内モンゴル全域に拡大しました。

このメソッドの導入により、山羊1 頭当たりの採取量を高く維持しながら、より細い繊維が得られるようになりました。山羊の飼養頭数を減らしても、生産者の生活水準を高めることができます。動物と生息環境のバランスの回復にもつながります。カシミヤの品質を改善し、放牧地の持続可能な利用の確立を目的としたイニシアチブです。長期的な視点に立ち、社会的メッセージを浸透させています。繊維から最終プロダクトに至るまで、クオリティを追求するロロ・ピアーナの取り組みの象徴でもあります。

「ロロ・ピアーナ・メソッド」は、中国の吉林農業大学、内モンゴル科学アカデミー、イタリアのカメリーノ大学、イタリア経済振興省・新技術エネルギー環境局(ENEA)との共同研究により開発されました。